ARP製ボルト ヘッドボルト&クランクメインボルト マツダロードスターNA/NB
マルハでは純正部品を多く販売していますが、特に多いのがエンジンパーツ。
各部のガスケットやオイルシールは勿論のこと、マルハ・オリジナルパーツも含め多くの引き合いを頂きます。
多くの皆様からご注文を頂くほどに、もっと内容を充実させたい。
そう思う気持ちはライナップが出揃うほどに強くなります。
そして今回、今までにラインアップされていなかったアイテムが加わります。
APR製 ヘッドボルトとメインボルトです。
ロードスター全車
ARP bolt・heavy-dutyFor studbolt engine head
code:218-4701 For 全車
¥43,120(¥39,200)
ARP bolt・heavy-dutyFor studbolt crank main
code:218-5401 For 全車
¥24,200(¥22,000)
ボルト張力の回復:
本来、ボルトはどうやってロック状態になるかと言えば、ボルトのテンション(張力)によるもの。
締め上げて伸びるから、元に戻ろうとするテンションが働くのです。
つまり、長年使って来たボルトは伸びてしまい、テンションが落ちてきています。
ボルトを新調することはボルトの張力を取り戻すことなのです。
スタッドボルト:
ARP製のボルトはスタッド式となっています。
スタッドボルトとは、両端にオスネジを切ってある棒状態のボルトを指します。
純正品のボルトは片側のみにネジが切ってあります。
まさしく通常の“ボルト"です。
エンジンヘッドやクランクシャフトの部分に何故スタッドボルトをレースエンジンやチューニング用として使うのか?
その辺りから説明いたしましょう。
ブロックの変形を抑える役目
エンジンブロックが中心になって、上側にエンジンヘッド、下側にクランクシャフト、そしてオイルパンがサンドイッチ状に組みつけられます。
エンジンブロックがエンジン骨格の中心になっているのです。
このエンジンブロックには、真円を前提にボア加工がほどこされ、ボア内をピストンが上下に激しく作動しています。
このブロックに言わば無理にヘッドやクランクが取り付けられるので、ある程度の変形が起きてしまいます。
変形をより少なくするためには、エンジンブロックのなるべく奥からボルトの張力を引き出すことが有効なのです。
スタッドボルトであれば、先ずブロック側にボルトを一杯までネジ込むことが出来ます。
ブロック側に切られているメスネジ全部を使い切り、ブロックより深い部分までボルト先端を行き届かせます。
ブロックの深い部分からボルトのテンションが掛かると、そのポイントから45度に発生する張力はヘッドとの合わせ部(ヘッドガスケット)では面圧の均等化を促進し、加えてブロック剛性を利用した変形の抑制に通じるのです。
また、純正品の様なボルトは、締め上げる際に、常に先端から数部山のネジに力が集中してしまいます。
スタッドボルトの場合は、ブロック側に切られたネジ全体に力が掛り、安定した張力を得ることが出来るのです。
ブロックネジ奥手前までしか、ボルトが到達しない。
先端から数山までにボルトストレッチのストレスが掛ってしまう。
右:ARPスタッドボルトの場合。
ブロック奥までしっかりネジを使うので、ブロック変形をより抑えられる。
ネジ全体にもストレッチのストレスが分散できる。
この原理は、クランクシャフトをホールドするメインキャップにも同じことが言えます。
激しく回転するクランクシャフトをガッチリとホールドすることは、メタルベアリングの性能を引き出し、ロングライフにも通じることになります。
エンジンがボルト&ナットで組上げられている以上、ボルトの見直しは当然必要なことであり、特にチューニングを前提としてエンジン組みをする際には、パワーアップ、使用回転域の高速化を意識し、強化ボルトを使うことをお勧めいたします。
因みにマルハのパワーロッドにもARP製のボルトが採用されています。
コンロッドボルトはARP2000を採用。
ボルト径をなるべく太くし、コンロッド大胆部のキャップをロックしています。
ARPボルトの性能:
ARP社は様々なボルト製造するボルトの専門メーカーです。
発端は1968年のこと。
Gary Holzapfelはボルトのトラブルが原因で友人たちのレースエンジンが次々にブローすることをきっかけとしてARP社を創設しました。
現在のARP社は自社一貫生産を行える設備を整え、資材調達、加工、熱処理、製品管理などその全てを北米数箇所の拠点で賄っています。
今や業界駆使のボルトメーカー最大手となり、F1をはじめ世界中のレースシーンで彼らのボルトが使われています。
さて、強化ボルトとして販売されるヘッドボルトやクランクメインボルトですが、単純な強化ボルトではありません。
先ず構造ですが、シリンダーブロック(鋳鉄)にヘッドガスケット(メタル)、シリンダーヘッド(アルミ)が重なり合い、それらを通しのヘッドボルトで引き締めます。
組み付け時に、冷間状態に規定トルクで組み付けることが一般的となっています。
しかし、実際の使用環境は冷間静止状態ではありません。
エンジン始動中は加熱による金属膨張が起こり、且つ燃焼によりシリンダーとヘッド燃焼室には過大な圧力が発生しています。
特に燃焼圧力は断続的なもので、ヘッドボルトに掛かる疲労は加速されがちです。
これら過酷な条件を見越して、単純な強化ボルトを採用すると頑固なボルトが仇になり、ヘッドの逃げがない分、ヘッドの歪みやボルト座面の埋没などが起こりえます。
そこで、ボルトに特殊な役目を追加させているのです。
それが“STRETCH・ストレッチ"です。
ボルト軸を若干細く取り、規定通りに締め上げた後に必要以上の加重が発生した場合にボルトが伸びる仕組みです。
ARPヘッドボルトは、エアクラフトクオリティに匹敵するプレミアムグレードの8740クロモリスティール材を採用。
熱処理後に転造加工されます。
レベルの低いスタッドボルトは熱処理前に転造加工されますが、理由は加工し易いためです。
ARPは敢えて熱処理後に転造加工する理由は、こちらの工法がストレッチ疲労に対し10倍もの強度を増すことが出来るからです。
この点は大変重要なことなのです。
最終仕上げに、およそ10回にも及び微妙な面取りを行い、極めてストレートなボルトとして完成されるのです。