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マルハモータース テクニカルアドバイス エンジンのO/H For Roadster

テクアド エンジンのO/H(2002/09/11)

昨年(2000年)はエンジンのO/Hがとても多い一年でした。
通常、雑多な仕事を精力的にこなしているとは言え、とにかく超多忙なマルハは時間の掛かるエンジンO/Hはさすがに受け入れる台数に限界があります。
遠方より依頼をされるユーザーが多いので、入念にメニューと予算を何回も検討してやっと仕事に入ります。
定番メニューでエンジンを造り置きをしておけば仕事の回転はもっともっと良くなる事は分かっていますが、色々な事情を考慮すると、どうしても個別に受注作成になってしまいます。

お客様の車をお預かりして、エンジンを降ろし、分解、測定、加工、修正、組み付け、セッティング、と時間の掛かるのは当たり前で、手間ばかり掛かってあまり効率の良い仕事では実際決してないのです。

日頃から、エンジンO/Hの見積もり依頼が結構多く、そのたびにお尋ねしているお決まりフレーズは、予算、希望仕様、使用目的、現在の状況。

ユーザーからの回答は口を揃えて、予算は30万円位、トルクが有って乗りやすく通勤からミニサーキットまで、レブは8,000RPM、現在約10万キロ走行。
さらには出来ればハイカム&キャブ or 4連インジェクション。

この内容に矛盾が多いことにお気づきでしょうか?
予算30万円は基本的なO/Hが前提になります。それに加えてトルクを増やすにはなんと言ってもボアのアップ、これには専用のピストンとボーリング加工が必要、8,000rpmはそこまで回すハイカムが必要、キャブや4連インジェクションは当然別途費用。
エンジンの脱着やセッティングも必要なのです。
当然工賃は発生します。
つまり、30万円ではとても収まりません。

他では格安のO/H済みコンプリートエンジンも販売されているし、10年/10万キロがO/Hの目安であるのも納得できます。

ただし、もう少し慎重に考えていただきたいのです。
エンジンのO/Hはどのように理解したら良いのでしょうか?
大切なポイントは以下の通りです。

  1.  自分のエンジンをO/Hするのか、他のエンジンに載せかえるのか?
  2.  再使用部品を検討する。
      ピストンはどうするのか?
      シリンダー内壁に傷が入っていたらどうするのか?
     クランクシャフトに傷や曲がりがあればどうするのか?
     コンロッドは再使用で使うのか?
     面研、ポー研をするのか?
     ウオ−ターポンプ、オイルポンプは再使用するのか?
     タイミングベルト系のパーツは交換するのか?
  3. どれくらいの予算を組めるのか?
  4. どの程度の仕様を希望するのか?
     鍛造のピストンを使えるのか?
     ボアを拡大して排気量をアップするのか?
     ハイカムを入れて高回転まで回すのか?
     短命覚悟で高回転キープの仕様にするのか?

私たちが最も気にしているのが、現状パーツのダメージ、再使用パーツの耐久性、そしてユーザーの使い方です。
どんなに気を使って組み上げてもブン回すことを繰り返せばエンジンは短命になります。
エアクリーナーの装着を怠れば、ある時 簡単にブローします。
エンジンオイルの管理が悪ければ調子も崩します。
予算を抑えて再使用パーツを多く使えば、耐久性に不安がそれだけ残ります。

そこでユーザーの方々にしっかり認識して頂きたいのは

  1.  速いエンジンイコール強いエンジンではない。
  2.  私たち業者が販売コストを下げるには再使用パーツを極力多く使い、且つ加工工程を極力省くことが前提となる。
  3. NA(ノンターボの意)エンジンは回転でパワーを稼ぐしかないのだが、それにしても高回転での使用は極力避ける。マルハでは7,000rpmをシフトの目安にしている。大きな作用角を持ったカムは勧めない。
  4.  高価なパーツや、新品部品は耐久性確保の為に使用することが多い。

例えば、自分の車が10万キロに達したのでO/Hを考えたとします。
あるSHOPで既に在庫になっているコンプリートエンジンが販売されていたとします。
そのエンジンに使われている再使用パーツの内、15万キロ走ったクランクシャフト、オイルポンプ、13万キロ走ったコネクティングロッド、やHLAが含まれているとしたらどう思いますか?
エンジン下取りでローテーションしている限りはこのような事態の可能性も考えられるのではないでしょうか?
あるいは、格安コンプリートエンジンが販売されていたとして、その内訳は殆どが再使用パーツで構成されていて、換わっているのはメタルとピストンリングのみ。
もしも、こんな状況でも納得されますか?

勿論、予算が苦しかったり、急なトラブルで中古のエンジンにそのまま載せかえることは当社でも行います。
また格安でO/Hするにせよ、その内訳をしっかりとユーザーに伝えます。これらはユーザーの都合で行うのです。
ただ、一般的にはユーザーがO/Hを望む場合は、あくまでもそれなりに信頼性やある程度のパワーアップを期待している訳です。

従い、当社ではリビルトストックエンジンを行いません。
言い換えれば定価を設定して下取りエンジンをベースにローテーションさせていくのは無理があるのです。
個々のエンジン毎にO/Hに必要なパーツは異なりますし、ましてや長時間使用したパーツの再使用は例え現状問題なくとも避けたいところです。

今のところ、基本的には当社ではお客様自身のエンジンをO/Hする手法を取っています。
自分の使用してきたエンジンだけに素性はオーナーが一番分かっています。
そしてどんな風にO/Hをしたいのかも明確になります。
だからこそ入念なメニューと打ち合わせが必要になるのです。

今後は、クランクシャフトまでも新品で組み上げるO/Hを検討しています。
コストが上がってしまうことは避けられませんが、極力コストを抑え、信頼のおける新品パーツで組上げることが可能になれば、自身を持ってストックコンプリートエンジンをご提供させていただきたいと考えています。
エンジンの最も大切な芯となるクランクシャフトまでも鍛造品で製造され、価格を抑えた基本O/Hに使える様になったら、すばらしいです。

トライしてみる価値は充分にありそうです。

私はいつもアドバイスしているのですが、オーナーにとってエンジンO/Hは通常最初で最後になるはずです。
だからこそ慎重に考えて欲しいのです。

皆さんはどのようにお考えでしょうか?

よろしければメールでご意見をお聞かせください。
今後の参考にしたいと思います。


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