テクアド ローテンプサーモ&ラジエターキャップ
前回のテクアドで“忙しすぎて電話がくるとどうしてもペースが落ちてしまう”との内容をお伝えしたら、
“迷惑が掛からないようにTELはやめて、メールさせて頂きます。・・”
との気配りを頂いた。
ありがたいやら申し訳ない無いやら、お気遣い本当に有難うございます。
相変わらず電話はガンガン掛かって来ます。どうぞ気になさらないでお問い合わせください。
今年の北米出張で仕事の合間にロス郊外のコーヒーショップに寄ったところ、暑い時に飲んだアイスコーヒーが実に美味かった。
綺麗なイタリア系のオネーチャンが入れてくれて、これまた鼻の下がドーッと伸びる。
馬鹿丸出しの日本人になっていた。
枯れた喉を潤いがてら“うまいコーヒーだなぁ、ここは何て店?”っと訊けば、
“何言ってんだ、ここがスターバックスじゃない。日本でもいっぱいあるでしょ?”と現地のスタッフに一蹴された。
静岡市内でも最近出来ました。 凄い勢いで勢力を伸ばしています。
アメリカ・テロの際に消防隊員が負傷者救済の為に近くのスターバックスに水を求めて行ったところ、商品はあげられないと断られた為、
その時のポケットマネーで水を買って行ったそうだ。
後日この事が発覚、消防隊員の友人がネットで事態の報告と共にスターバックスの不買運動が急速に広まった。
事態を重く見た同社は直ちに謝罪、同時に高額の献金を行った。
僅かな水代がエライ高額な寄付金に変わったのである。
これだけを見れば“スターバックスは悪いやっちゃ”と世間の非難の的になりそうでもあるが、実際はどうだったのだろう?。
会社の規則に極めて忠実な社員や、あるいはアルバイト待遇なので勝手に商品を差し出す権限など無く、仕方なく断ったのかも知れない。
どうであれ、結果論からすればもっとやり様があった事に間違いないが、ただ、勢い余って不買運動に荷担するのもいかがなモノか?
どうしても情報に翻弄されて自分を見失いがちになってしまいます。
インターネットもそう言った意味では危うい事が多く、本当のところはどうなのだろうと言う疑問を持つ“余裕”は欲しい物である。
現在、マルハではアルミ2層強化ラジエターをラインアップ。
1.
3kgf/平方セインチ(以下正確単位は省略)のキャップ付きで販売しております。
先日、お客様から“1.3kgのキャップはウォーターポンプ破損の恐れがあるから止めた方が無難だ。と聞いているが実際はどうなのか?”
と言う内容の質問を頂いた。
また、 “強化キャップは意味が無い”と言われているがどうなのか?と他のお客様からも問い合わせがあった。
情報の氾濫である。
どうも皆さん耳年増になっていて、特に“悪い”と言われる情報には非常に信憑性を感じてしまうようだ。
丁度良い機会なのでローテンプサーモも合わせて説明しようかと思い立った次第である。
1. ローテンプサーモスタット:
先ず、冷却水の流れからおさらい。
エンジンの冷却は主にシリンダーヘッド(特に排気ポート側)を冷却するように設計されています。
シリンダーブロックが2〜3 に対して ヘッド側は8〜7の割合で冷やされます。 燃焼室のあるヘッドが特に熱にさらされる訳です。
ヘッドから熱い冷却水がラジエターに送られます。 サーモスタットはラジエター入り口に位置しており、適温前であれば弁を閉じてラジエターへの水流をストップ、適温になれば弁が開きラジエターに水を流し始めます。
この時の開弁温度を下げたサーモスタットを“ローテンプサーモ”と呼んでいます。
サーモスタットはラジエター入り口に位置するタイプと出口に位置するタイプに分かれます。
ロードスターは入り口型。トヨタなんかは出口側が多いです。
入り口、出口型それぞれには目的がありますが、今回はチョッと保留。(話し長くなる)
サーモが閉じている場合はエンジン内部で水が循環します。
実はこのときにヘッド内部で水が淀み易いと考えられています。適温になってラジエターに水が流れ始めるとエンジン内部の水流が変わり、都合よく循環するのですが、このため適温キープが出来るのであればサーモレスでも良いと考えます。
実際にサーモレスはレースカー位にしか適応しませんが、サーモが無いと実に便利な面があります。
例えば、サーモレスでラジエター開口部をブラインドシャッターにして、オート制御。なんてどうでしょう?
サーモが無いと:
* エア抜きが実にスムースに行える。 エアの噛み込みが少ない。
* エンジン内部の冷却が均等化されヒートスポットを発生させ難い。
* 熱くなったとたんにサーモが開くと冷たい水が急激にエンジンを冷却する為サーマルショックを引き起こすが、その現象が無い。
等が思い当たる。
ローテンプサーモの悪いとされているところは:
* 通常タイプも、ローテンプも結局弁が開くわけだから、オーバーヒートの根本対策にならない。
* 電子制御の場合、適温保持されないと補正が掛かり,燃費が悪くなる。
こんな所があげられるのでしょうか?
確かに、一理ある。 だから普通に乗っている方にはお勧めしません。
当HPのCOOLINGのページでもそう述べています。
燃費の方は温度差によるものですから、どれほどのダウンになるかは数値は出せませんが、可能性は否定できません。
けれども、峠を攻めたり、サーキットに行かれるからこそブレーキ強化やクラッチ強化、サス周り、等皆さん工夫されている訳です。
そう言った観点からローテンプサーモもチューニングアイテムと考えたらどうでしょうか。
ミニサーキットで走るにしても、集中して走るのは恐らく15分程度。
その限られた時間内を如何にトラブル無く走るかが問題なわけです。
走り始めの際にローテプであれば早くから開弁するので水温上昇の時間を稼ぐ事が出来ます。
また、開いたサーモが閉じる温度も低い訳だから、低い温度から またトライが出来る。
(ストレートが少し長めのサーキットでは充分冷えるが、極端なミニサーキットでは一度上がった温度はそうは下がらないのでこの点は注意するべし。)
通常サーモでは常に温度を高め(一般では適温だが)に保持するので攻め込むと直ぐにヒートしてしまう経験をお持ちの方も少なくないはずです。
結果的に後半の熱ダレを少しでも抑える事が可能になります。
この様に“対策品、あるいはチューニングアイテム”と考え得るべきです。
それを日常のレベルで判断するので誤解を招く結果になります。 サスだってローダウンすればボトムヒットしたり、乗り心地が悪くなります。
所謂一長一短なのです。
2. ハイプレッシャーキャップ:
先ず、写真を見て頂きたい。
キャップテスターを直接ラジエターに装着した物です。
(10KPA(パスカル)は限りなく0.1kgf/平方センチに近いとお考え下さい。)
このテスターゲージの変化を読み取る事で走行中のラジエター圧を確認しようと言う試みです。
最初に完全に暖気が済んでいるラジエターにテスターを取り付け、20KPAくらい(極僅かな圧力)を手押しポンプで加圧。
そのまま少し様子を見る。
圧力が保持されていることを確認してから、エンジン始動。そのままアイドルやブリッピングを繰り返す。
この時点で圧力は約30KPA。
さらにシャシーダイナモテスターで実走シュミレーション。
ついでにパワーチェックも兼ねてMAXパワーまで測定。
数回繰り返すがパワーの落ち込みは無し、水温も一定。
肝心のテスターは30〜40KPAで一定。全開レブからアクセルOFF時のみ50KPAに上昇。
シャシーダイ上で7000RPM/アクセルOFFの瞬間
これは速い水流を造った後でアイドル回転まで一気に下がるのでウォーターポンプエンペラが抵抗になり水圧が上昇するもの。
このテストから分かることは、別に通常は0.9kgすら加圧されていないと言うことです。
水温が安定して通常走行しているのであれば1.3kgの影響は反映されていません。
マルハでは定期点検や車検時にはキャップを全てテストします。
この際、不良と判断されるキャップは10%ほどはあると思います。古いキャップは圧力が保持できなくなってきます。
リザーバーに水が殆ど入っていない場合などはキャップの不良が主な原因です。
蒸気となってキャップ口から逃げているのです。
不良キャップのままでもあまりオーバーヒートしません。(若干ヒート気味する車種はあるよ。)
なぜなら、テストからお分かり頂けるように普段は高い保持を必要としていないからです。
キャップ加圧は最大値を示し、尚且つ沸点の上昇と言う意味合いで使われています。
実車のキャップをテスト。
約10KPAでリリーフする。正常。
さて、今度はチューニングの観点から考えて見ましょう。
サーキット走行で水温が高めになると冷却水から多少なりとも気泡が発生します。
この気泡が圧力を上昇させてしまいます。
ラジエターホースがパンパンに張っている場合があります。
この様な現象は何かしらのエア噛みが原因。 ハード走行の気泡の発生やヘッドガスケットの機密性の悪化が考えられます。
抜けているガスケットは問題外ですが、気泡の発生は強化キャップである程度抑えることが出来ます。
沸点は120度でも実際にはその手前から多少ですが気泡は発生しているのです。
気泡が入り込むと冷却水が熱を吸収する能力が極端に落ちてしまいます。
だから尚更ヒート気味になってしまいます。
そんな場合にハイプレッシャー型キャップが有効になります。
確かに、ハイプレッシャーになるのですから、ホースやポンプのシールに通常よりは負担が掛かりますが、
実際にはマツダスピード,TRD,NISMO等のメーカー系から販売されている商品ですので極端な心配は無用と考えます。
グループA時代は3〜4kgの高いプレッシャーが採用されていたと言う資料もあります。
これほどに加圧する理由は現代のF1も含めて言える事ですが、限られたスぺースでラジエターは設定しなければならず、
そのため高い温度で保持し大気との温度差を広げ熱交換の効率を上げる事が目的なのです。
今はクラッシュ時の高温蒸気発生を避ける為、レギュレーションでラジエターの加圧さえ規定されています。
(リリーフバルブは最大3.75バールまでに制御)
効率がよくなればエンジン出力を上げられ且つラジエターをより小型化することが可能になります。
これからの新型車はサーモやキャップなどの制御がより複雑になるはずです。
適正温度を如何に制御するかはエミッションコントロ−ルと大きく関係するからです。
少し話がそれましたが、アフターマーケットのキャップにしてもローテンプサーモにしても、チューニングアイテムとして考えて頂きたいのです。
マルハの新設定のアルミ2層ラジエターは格安販売をしておりますが、
同時に“ラジエターを交換するならキャップにも気を配って頂きたい”とのお願いが込められています。
ハイプレッシャー型キャップを勧めると言う意味合いより、定期交換を勧めたいと言う意味で付属しております。
何はともあれ、冷却系はクーラント、キャップ共に定期的に交換。
基本性能を維持した上で、自分にあったチューニングを検討して下さい。
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