テクニカルアドバイス
For Roadster

テクアド ホースバンド

マルハの近所のガソリンスタンドのご主人は中々ユニーク。

少し前の話しであるが、給油を終えた車を道路に誘導している時の出来事である。
"オーライ、オーライ"っと手を振りながらスタンドから誘導しているとそのまま走ってきた車に自分がはねられた。

目前で起きた出来事を一部始終見ていたドライバーが一言、

"・・何にもオーライじゃぁネ−よ。"

大変な話しでもあるのですが、笑ってしまいました。
今は元気で仕事をしていますから笑い話になるのですが、もし大惨事にでもなれば それどころではありません。
常に、安全の確保はしなくてはなりません。

私たちの仕事は本当に怪我が多い。
多少の擦り傷は怪我には入らないかもしれませんが、狭いエンジンルームに無理やり手を突っ込んだり、苦しい体制で仕事をしたり等、いつも怪我の元になるような事ばかり。
だからこそ、シッカリとした安全確保が必要になります。
これは、一般プライベーターでも同じ事が言えます。

ホースバンドの話しで何故安全確保かと言いますと、実はロードスターのホースバンドは取り外しの際、大変注意しなくてはならないのです。
これは私自身の話しですが、ラジエターホースの交換をしている時の事、作業の途中で話し掛けられたのです。
その時、ホースバンドを握っていたプライヤーの力が抜けた瞬間、ホースバンドがいきなり跳ねて、私の眼球に直撃。
眼球から出血しているのを片方の目で確かめた時は、"あーやってもうた。 片目つぶしたー。"っと痛さも忘れて思ってしまいました。
当然、何も見えず、そのまま病院に直行。
その後は幸いな事に視力も落ちずに完全回復。

俺は不死身だー!!。っと自慢するどころか、それ以後はホースバンドを外す時はウェス(ボロ布)をあてがいながら、慎重に作業をするようになりました。

  


ここで3つのタイプを紹介します。
正式名称は分かりませんので、省略させて頂きますが、左から昔によく見られたワイヤーのタイプ。
真中がロードスターに使われているスプリング式、右が一般に売られている汎用の板状のタイプ。

むかーしに読んだ資料には左のワイヤータイプが最もシール性が良いと書いてあったのを記憶している。
ところが少し前に出ていた雑誌の記事には右端の物が最も良いと書いてあった。
その時の記事はどこぞの国の有名輸入品を誉める為の記事だったのですが、本当なのかと少し疑った。
そもそも、欧州車の場合、ラジエター冷却水の漏れはホースの付け根から漏れていることが多い。
ホース自体の材質の差も当然あると思う。
国産のホースは差し込むと、バンドで締めなくても既にシッカリとパイプと密着している。
外車の場合は差し込んだだけではユルユル(緩い)しているのが分かる。
この時点で差が出ている。
前者は少しのバンドのカシメで十分なのだが、後者はユルユルホースをシッカリとバンドで締め上げないと圧力が掛かった時に簡単に冷却水が滲んでくる。
漏れるまでは行かなくても、ホースの付け根から滲んだ痕跡は多くの外車でも見受けられる。
つまり、始末が悪く、これ以上は手の打ちようが無い事になる。
さらに悪いことに、以前の国産車はワイヤー式のバンドが採用されていた。
(勿論現在も新車採用されている車もあります。)
一方の外車は板状のタイプ。
私は昔,BMWのホース付け根からの漏れ対策で、ワイヤー式のバンドに交換した事がある。
結果はOKだった。

真中のロードスターに使われているバンドはスプリング式なので、装着もラクだし、その後の締め付けメンテナンスも不要となる。
ラクチンなメンテナンスフリーのバンドなのだが、レースカーにはとても使えない。
マルハのレースカーを作った時に一部このバンドを使ったところ、冷却水が漏れた。
エンジンを見ているだけでは何が起きたのか分からなかったのだが、究極の高回転ではエンジンに多少なりともバイブレーションが発生すると、振動の共鳴からスプリング式のバンドでは完全シールが出来ず、冷却水が漏れた。
それからは純正のホースバンドをレースカーで使うのはやめた。
こんな物は本来アールズなどのフィッティングを使ってシッカリとセーフティを掛ければよい話しなのだが、非常に高価でも有り、オイルラインや一部の冷却水に使ってはいるものの、純正形状の部分は通常のプッシューオンタイプにしているのが実情。

話しが大分それてしまいましたが、何しても、今回の話しは安全確保。

単純なホースバンドを外す作業であっても、飛び跳ねたバンドで怪我をしないようにウェスをあてがっておいたり、シッカリした工具を使うなどの対処をして下さい。

スプリング式の純正バンドを誤って飛ばした方は私以外にも多い筈です。
本当に危ない物です。

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