オープンカーのロードスターと通常の車(箱車)ではドアウィンドの構造に大きな違いがあります。
その一つが窓枠です。
ロードスターには窓枠がありません。
通常の車では窓枠があるので、ガラスの両サイドにガイドがあります。
常に両側の枠内に支えられていますので、ガラス上下作動に於いてどのポジションでも安定する構造となります。
ロードスターの場合は、この窓枠は前方だけにしかありません。
この時点で既にガラスの作動姿勢は不安定なものと言えます。
しかし、後方側には窓枠こそありませんが、ガイドレールがドア内部に設けられ、ガラス下部に取り付けられた樹脂カラーがガイドレール内をスライドする格好でガラス姿勢に安定感を出す様になっています。
残念なことにこの樹脂カラーが経年劣化によりほぼ100%に近い確率で変形あるいは劣化脱落などの現状に陥っております。
樹脂カラーを失った窓ガラスは、中間ポジションで走行するとガタガタと揺れてしまい、不安定なものになります。
壊れたら治せば良い。
車の修理屋として半世紀以上も営むマルハにとっては至極当然の事なのですが、問題はマツダ純正部品として設定が無い事なのです。
こんな小さな樹脂部品ではあるのですが、大きな役割を持つ部品でもあります。
何故この部品を単品設定しなかったのか?
知る由もありませんが、実際交換する作業は複雑でもなく、頻繁に壊れるレギュレーターなどと一括して作業を行えば容易に処理できるレベルです。
新品の樹脂カラーがあれば、そこから採寸する方法もありますが、残存していても劣化で変形している現状品が採寸基準を満たしている訳がありません。
さらに、NA系とNB系では樹脂カラーのデザインも異なります。
加えてガイドレール自体は湾曲したデザイン(窓ガラスも全てドアの曲面に合わせた凝ったデザインなのだ)になっていますので、上手く摺動させるためにクリアランスも考慮しなくてはなりません。
止めがガイドレール自体の製造精度。
コの字状のプレス寸法が微妙にバラつきが有ることが分かりました。
きつい寸法に仕上げると、途中で引っかかりや固着が発生してしまいます。
重い負荷はウィンドの上下スピードを落としてしまうばかりか、モーターやスイッチに不必要な抵抗を与え消耗を加速させてしまいます。
先ず素材をジュラコンに限定し、加工工程の容易性・自己潤滑作用・耐摩耗・摺動時の異音低減・などを配慮いたしました。
デザインはシンプルなものとして、クラックなどの発生源になりやすいスリット(グルービング)は極力減らしました。
グルービングはグリース溜まりになるので完全に廃止するわけには行きませんが、NA系よりもNB系の純正樹脂カラーがより単純化されていることに着目し、メーカーのコンセプトを見通しながらオリジナルデザインを考案いたしました。
カラーは窓ガラスに固定しても、内部ガイド(固定ボルト)を中心にクルクルと回転する設計です。
実際にはガイドレールに挿入されても、常にガイドレール内でカラーがクルクルと回転している訳ではありません。
検証の結果、殆ど回転しないままで上下にズルズルと引きずられている事が分かりましたが、グリース切れ、あるいは湾曲しているガイドの一部と接触がきつくなった時など、無理なくクルっと回転することで抵抗を和らげることができます。
純正品の変形はほとんどが長期間の無回転の結果、一か所に応力が集中していたことによるもので、これは圧力により大きく変形してしまう材質にも問題があることが分かります。
ジュラコンは固い樹脂素材なので純正品の様な大きな変形はありませんので、今後長期に渡り安定して使用が可能になります。
[Home]