テクニカルアドバイス |
テクアド CVT(オートマチック) CVTて何だか知っていますか? コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション/連続無段変速機のことです。 最初はスバル、その後スズキ、日産、今はホンダもやっています。 自転車や原付もそうです。
構造は簡単、回す方のプーリ(ドライブ)と回される方のプーリ(ドリブン)を金属ベルトで動力伝達しています。 それぞれのプーリは油圧で中央(ベルトの掛かる部分)の間隔を開けたり、狭めたり調整されます。 するとテーパーになっている中央部の実プーリ径が変化して、これが変速になる訳です。 巡航中はトルクが要らないのでプーリの油圧は抑え目、坂道はベルトが滑らないようにプーリの締め付け油圧もグンと上がります。この辺りはスロットル開度でECUが判断します。 振り返れば、ドイツ車(ビートル)のファンベルトもプーリのシムを換えることで実プーリ径を調整してベルトの張りを出します。 作業は面倒ですが、テンショナーのような第3のプーリが不要となりスッキリしたレイアウトになります。 CVTそのものの発明は100年も前になるそうです。 写真のCVTはホンダの物です。 恐らく私たちメカニックが実際に分解作業するよりも、リンク品にアッセンブリ交換することの方が遥に多いと思います。 一般的なATも同じです。 従い、ディーラーも含め分解整備が出来ないメカニックばかりです。 何でも挑戦しなくては進歩は得られませんが、みんながやらないからMARUHAの仕事が増えます。 CVTの一番のネックは金属ベルトの耐久性にありました。 軽い車はいいけれど重い車だとベルトが切れてしまうのです。 そのため、昔から排気量の大きい車には搭載されてきませんでした。 そしてこの度の日産のセド、グロのエクストロイドCVT。 やってくれました。凄い技術です。
ベルトを使わず、プーリ間をパワーローラーなる楕円のローラーを使ってきました。 電子制御でこのローラーをグリグリやるとプーリの接触部分を変化させ変速につなげます。 ローラーは全部で4つ、それぞれが完全にシンクロしないと大問題。 凄い力が掛かっているところに正確なシンクロ。 一箇所でもローラー・プーリの摩擦が変わったら大変なことに。 だから考えて来ました、特殊金属と専用フルード。 これらが無かったらこんな芸当できません。 パワーローラー部はNSK(日本精工(株))、専用フルードは出光興産(株)の開発。 メーカーの開発の裏にはベアリングメーカーや金属メーカー、オイルメーカーなどの特殊技術や特許がギッシリ。 またこのシステムをダブル構造にして大トルク(40kg)まで対応できるとのこと。 ディスクとローラーの最大圧着力は10tにもなるそうです。 完全非分解で、メカニックが内部を見ることはありませんが、拍手ものです。 マニュアルでも一般的なATでもそうなのですが、変速の度に(例えば加速中)エンジン回転数が落ち込みます。 この繰り返しなのですが、これはパワーロスになります。 CVTの場合、エンジン回転は殆ど一定のまま加速を続けます。 スムースにロスが無く理想的な加速を実現できる訳です。 乗っていてナンカ気持ち悪い感じもありますが、セドグロ辺りの高級車は本来快適性を求められているのですから、後ろの座席でふんぞり返っていて知らない間に150km/hの高速巡航なんてことも可能なのです。 頑張れ日産! でもこんな金あったらやっぱり“おベンツさん”か“ポルポル”にするよな。 新しいCなんて格好いいものね。 悩んでいても結局 私には無縁の話ですが。 ところで、オイルの“せん断力”の話を最後に。 エクストロイドCVT専用オイルの開発にあたりディスクとパワーローラーの接触部にオイルが介在し、オイルそのものの“せん断力”によりトルクを伝達させなければならなかったとある。 金属同士は接触していない。 潤滑剤として使用される反面、抵抗としても使われていることになる。 これは圧力を掛けられると、分子レベルでオイルの配列が変化しせん断力が発生する為だ。 例えば、LSDも同じことでオイルの粘度を変えると効きが変化する。 これもせん断力の変化による物だと思う。 LSDのオイルを75W-90(GL-5)から80W-140なんかに変えてみると性格がガラっと変わり別物のLSDになる。 この辺りも面白いから是非試して見てはいかがでしょうか? |
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