テクニカルアドバイス
For Roadster

オイルパンの中

オイルパンはOilpanと書きます。パン(pan)は平なべの意。

要するに油受けということです。走行中は鍋の中でチャポチャポとオイルが傾いているのですが、これはあまり良くないことで、その対策としてバッフルプレートが装着されている訳です。

ロードスターのオイルパンは後方が極端に下がっているタイプで、ストレーナーが完全にオイルにドブ付けになるように設計されています。

このような形状であれば殆どの走行条件下でもストレーナーのエア吸いが避けられることになります。

具体的に分かり易く説明する為に写真を撮ってみました。
撮影は見やすいようにクーラント溶液を使用しました。


空状態。偏り防止のプレートが確認できます。

1リットルの液体を注入。これくらいあればストレーナーはオイルを吸い上げます。

2リットルを注入。全体的にオイルが浸り始めます。

3リットルを注入。充分な量です。少々な
Gではエア吸いは防いでいます。

3.5リットル。少し多目な量です。
 

もちろんこれは、静止状態ですので実際はこの中でオイルは時に激しく傾く訳です。

エンジン始動中はエンジンブロックや、ヘッドにオイルが循環されています。
特にヘッドには多量にオイルが上るので、オイルパンの残量は場合によってはかなり少ない状況になります。
エンジン回転を高回転キープでタイトなコーナーを攻めている時などはこのような状態です。
ハードなブレーキ時も要注意です。日産
GT-Rなどは、強烈な加速を得られる反面、このようなトラブルを抱えることになります。

サーキットで焼き付く場合は、オイルの潤滑が悪いケースが多いのも事実です。

高回転(高負荷)に耐え切れずに金属疲労するよりも、そのサーキットのある一定のコーナーで段々にオイル切れのダメージを受けてついに果てるトラブルが多いのです。

つまりストレートよりも裏のコーナーでエンジンブローをさせてしまうことになります。

本題に戻りますが、それでは純正のバッフルでは不十分かと言えばそれほど心配し無くても良いかと思います。
サーキットを本格的に攻めることを目的としてエンジンチューンを施す場合は少し工夫して改良するのも良いかもしれません。

一般的な峠レベルのユースを前提とすれば、わざわざオイルパンをハグルことはありません。

以上はGによるオイルの傾きをエア吸いの観点から説明しましたが、実際はもう少し問題が残ります。
オイル跳ねによる回転抵抗です。
クランクは常時回転しています。
そこに粘度のあるオイルが掛かると明らかな回転抵抗になってしまいます。

私の記憶が正しければ、この辺りを考慮してオイルパン内に平たいプレートを敷いてしまったのはトヨタが最初だと思います。(違ったらごめんなさい。かなり昔の話です。)

クランクは殆どの車種が右回転をしています。
従い左右対称のバッフルは必要なく、むしろ回転に適した形状が望まれます。

最後にこれらの問題をクリアにして確実な性能を維持させるのがドライサンプになります。

ドライサンプは簡単に言えば、オイルパンを無くし落ちてきたオイルはポンプで別タンクに溜める手法です。このタンクから改めてエンジンにオイルを供給するのです。

オイルパンが無くなった分搭載位置を下げることも出来、レースには非常に都合が良いシステムです。
レギュレーションで禁止している場合はレース費用を抑え、参加者を増やすあるいは負担をなるべく軽減させる協会側の配慮があります。

効果な材質の禁止(チタン、カーボン)なども同様です。

[back]