テクニカルアドバイス
For Roadster

根性の牽引

エンジンブローをしたので載せ換えを依頼された。

聞けば“千葉県”からの電話。どの様に車を持ち込まれるのかと尋ねると、牽引では無理だろうかと逆に聞かれた。

千葉〜静岡の牽引なんて聞いた事も無い。
無理も何も、危険過ぎる。
やめた方が良いと思うと正直に答えた。
載せ換え程度の作業なら地元の業者に依頼したらどうかと促したが、

ターボ仕様の為、その後のセッティングも依頼したいとのこと。

B6のターボは当社でも実績があり、変なサブコンなどは使わずにROMのチューニングのみで対応している。
それなりに自信はあるのだが、それにしても長距離の牽引はどんなものか?

“横浜からの牽引はやったことがあるので、静岡までの牽引も多分大丈夫と思う”と云い切るユーザーに圧倒された。箱根の山はどうするんだろうと考えると積載車をレンタルした方が結果的に安いように思える。

入庫予定日の午前中についにご登場。
本当に牽引でやって来ました。彼は本物です。

工場の他メカよりも、スゲーの歓声があがる。

後輩らしき彼が三菱の愛車で、延々と引っ張ってきた。
箱根の峠ではさすがに引き返そうと何度も思ったらしい。
クラッチがイッチャッてないか少し心配したが、先輩らしきロードスターの彼は“イヤー、長かった−。”
の余裕の一言。
笑っちゃいました。

世の中には本当にすごい奴らいる。
呆れるどころか少し変な感動を覚えた。

以前にも静岡市内での話だが、ドリフトの練習をしていてサスペンションを傷めた車があった。朝、工場のシャッターを開けるとタイヤがアッチの方向を向いている180SX,そして張り紙のメッセージ。
“5万円以内で修理願います。”

後から聞けば、前進は出来ないが、バックなら何とか走れるので、バックのまま延々と夜中当社まで自走してきたとのこと。

笑っちゃいました。
スゲーやつらはどこにでもいるのです。

こんな状態で自走してきただけでも凄いのに、修理費まで自分で決めてしまって、

本物の強者です。

因みにオートマチック車の牽引はなるべく避けてください。

マニュアル車はギヤの回転により潤滑されていますが、AT車はオイルポンプによって各部を潤滑しています。
エンジンが掛からない状態での牽引は内部への潤滑が出来ず、
AT本体にダメージを与える原因になります。

つまり積載車での運搬が望ましいのです。

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