テクニカルアドバイス
For Roadster

クランクアングルセンサのトラブル
 
先日 組み上げた4連インジェクションシステムが調子が悪いと連絡が入った。
エンジンは掛かるが吹き上がらないと云う。
何の異常か見当もつかず,兎に角 積載車で運搬した。

走行距離は7万キロを超えたところで4連を組み上げたもので、さすがにサーキットで
回し過ぎたのかと思ったが、色々とバラス前に各部の事前チェック。
圧縮のチェック、点火系のチェック、燃圧チェック、etc,点火時期をチェックすると、とんでもないところで点火をしているではないか。
こんなにタイミングがズレているのでは、まともに回るはずが無い。
タイミングベルトの歯飛びが原因と予想しながらタイミングケースを取り外す。
上死点に合わせてチェック。
思わず、"アレー?"と首をかしげてしまった。 
"合ってるなー"。
エンジンが掛かるので、クランクセンサはちゃんとピックアップしているし、フルコンのプログラムは異常がないし、それでもやっぱりクランクセンサかと分解してみることにした。

内部を確認しても何が悪いわけでもなく、これと言って故障が見当たらない。
だいたい、壊れていて点火しないのなら話は早いのだが点火時期が大きくズレるのは電子制御の場合あまりない。
暫くして、ピックアップローターの中心にガタがあることに気づいた。
"コレだー。"
と確信しつつ、早速中古の代替パーツと比較。
再納得。ローターの材質が非常に薄い鉄板を使っているため、シャフト部分の強度が不足。ローター側切り欠き部が徐々になめていって最終的にガタになった。その為、適切な時期でピストン位置を検出しないので今回のようなトラブルになった。
ローターは磁石による磁界を切ることにより電圧を発生させ、ECUはその波形を検出する仕組みになっている。
ABSにしろ、トラクションコントロールにしろ回転物のピックアップにはこの方式が良く使われるが、磁界を切る事がそれなりの抵抗になるわけだからもう少し強度のある対策が必要かと思う。
 
写真では少し分かり辛いが、ローターの切り欠きとシャフトにガタが見られる。
同じ様なトラブルは他でも発生しているかもしれない。要注意である。

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