一般的にビギナー向けは1WAY、あるいは1.5WAYであり、上級者向けやドリフト向けは2WAYなどと表現されています。
これらの表現ははたして正しのでしょうか?
機械式LSD装着を考えている皆さんは、雑誌、広告などの情報を元に値段と照らし合わせながら、どのLSDを選択しようか迷われていることと思います。
さて、ここではマルハ流LSD選択術を交えながらマルハLSDを紹介して行きましょう。
青ライン: 1WAY・LSD装着FF車のアプロ-チ例
緑ライン: 2WAY・LSD装着FR車のアプローチ例
この様な粗い表現をされるケースがあるが、理由が具体的でなく、説明が不十分である。
内側を通り最短で無理なくクリップポイントを通過するのが1WAY,外を膨らむラインが1.5WAYや2WAYと表現されています。場合によっては2WAYは1.5WAYよりさらに外側に膨らむと説明されるケースすらあります。
ここで、しっかり認識して欲しいのが、先ずFF車とFR車の違い。
これら操作の内、b・c 間はアクセルoffあるいはハーフアクセルとなりながらのステアリング操作となります。
特にb においてアクセルを抜いていてもLSDが効いていてはアンダーステアでラインが膨らむと表現されるのです。
ただし、この様なアンダーステア状態になり易いのは、あくまでもFF車に於いての傾向と考えるべきなのです。
FF車は前輪が駆動し、そして前輪でハンドル操作を行う為、LSDが効いていると内外輪の差をデフが吸収し難く、通常より余分にステアリングを切らなくてはならないのです。
先ず、しっかりとポイントのおさらいです。
1.5WAYも厳密には2WAYの類なのです。
アクセルONのみで効けば1WAY。 ON/OFF時で効けば2WAYです。
LSDの効き具合はイニシャルトルク、ディスク系、ディスク枚数、そしてプレッシャーリングのカム角。
これらの要素でLSDの性格が決まります。
カム角の切り方をアクセルONに比べ、OFF時を少しマイルドにしてあるLSDを全て1.5WAYと総称してしまいます。
場合によっては1.6WAY位の比率であったり、1.4WAY位の比率だったりします。
また、ある車のアクセルOFF時のカム角(例 ON60度/OFF45度)がある車のON時のカム角(ON45度/OFF20度)だったりするケースもあります。
表現の方法を変えれば、OFF時のカム角を基準とすれば、2.2WAYなどと言えなくもありません。
如何に曖昧に1.5WAYが表現されて販売されているかがお分かり頂けると思います。
イラストは2WAY。
横中心線を規準に、上下の角度は等しい。
さて、1.5WAYがマルチでFF車・FR車のどちらにも適しているのでしょうか?
前述の様にアクセルON・OFFによるカム角強弱を各メーカーがどの様に付けているのかでも話は異なりますが、やはり基本的にはFF車に比較的適していると思います。
FF車コーナーアプローチでのステアリングの癖(余分なステアや重い感触など)を緩和させる為です。
TRDやNISMO系LSDにおいてもFR車には2WAYを主に設定をし、FF車に1.5WAYをラインアップしていることからもメーカーの姿勢を見る事ができます。
そして、マルハではロードスターだけにしかLSDを設定しておらず、"FR車を操る"
為のLSDであることから2WAYに拘るのです。
「LSDのロックは100%ではありません。」
アクセルのON・OFFによりピニオンギヤシャフト(十字軸)がプレッシャーリングを内側より外方向に押し広げます。
押し広げ加減をプレッシャーリングの角度(クサビ効果)で調整します。
いずれにせよ、外方向に押し広げる力は複数枚のディスクを圧着させてLSDをロックさせます。
圧着によってロックさせるのですから、当然ロスが出ます。
このロスは例えば、タイヤのグリップが高い、内外輪の差が大きい、カム角が小さい、
オイルが軟らかい、ディスク径が小さい、枚数が少ない イニシャルが低い 等の理由で
発生します。
ピニオン軸の軌跡を色分けした図。
アクセルON:緑 アクセルOFF:赤
図は2WAYなので、どちらもプレッシャーリングを外に開く働きをする。
ロスの発生は100%ロックにならない事を意味しますが、全てが"悪いこと"と言う分けではありません。
イニシャルを下げて乗りやすさとロックの両方を狙うトルク感応型、粘度の低いオイルで乗りやすさ(チャタリングの抑制)など、意図的にある程度のディスクの滑りを狙うのです。
また、ある程度のディスクの滑りは抑えられないものである事を前提にLSDを判断することも大事です。
ただ、安定したロックを狙ってこそのLSDでもあり、やはりディスクの性能はとても大切な要素です。
小さな径や、少ない枚数ではディスクへの負担も大きく、早期摩耗やハード走行での耐久性が期待できません。
マルハのLSDは従来の機械式LSDに比べ大きなディスク径と多い枚数を確保しています。ディスクの容量アップは低イニシャル設定でもシッカリしたロックを可能とし、長いライフで楽しむ事が出来ます。
イニシャル変更で、LSDロックまでの時間(瞬間ですが)も変えることが出来ます。
カム作用により外に押し広げられるプレッシャーリングがディスクを圧着させてLSDがロックしますから、与圧が低い程圧着までの時間が掛かる事になります。
つまり、イニシャルを上げればより瞬時にLSDがロックし、(アクセルへの反応が速い)
イニシャルを下げれば比較的ダルにロックするので日常的には乗り易い特性になります。
ただし、イニシャルを上げるほど、ディスクが互いに圧着され、最初からLSDが多少なりとも効いている状態となり、トルク感応型とは呼べなくなります。
日常的な要素を残しつつ、LSDを楽しむ方向に向けることは、相反する要素を取り入れる事でもあり、この辺りの兼ね合いが難しいところです。
緑:コイルスプリング
赤:一般的なサラバネ
赤:マルハLSD
マルハLSDで採用しているサラバネは一般的なサラバネと比べ、ある点から一定の領域では殆どバネ力が変化しない特性があります。
この特性により、多少のプレートの厚みが変化してもイニシャルトルクの変化が生じないと言う性能を実現しています。
また、サラバネはコイルスプリングの特性とは異なり、ある一定の領域からは一定のバネ力を維持する事から、長期に渡り安定して性能を維持する事が可能です。
また、サラバネは一枚の一体化したバネであるため、トルクをディスク全体に均等に与える事ができるのです。
ディスク間に入り込むオイルの粘度が硬ければ、ディスクの滑りをより抑える事ができます。
これはオイルの"せん断力"を利用するものです。
例えば、机の上に水を垂らしプラスティックの下敷きを当てがいます。この下敷きを手で動かす時、水がある程度抵抗となりますが、一方で下敷きを摩擦から保護する役目も担います。この水が軟らかめなオイル、そして硬いオイルと変わって行けば、手に掛かる負担は増大していきます。つまり滑り難くなるのです。
LSDに当てはめれば、粘度の硬いオイルを使うほどディクク間の抵抗が大きくなり、ロック率を高める事ができるのです。
一方で、滑りにくいオイルは低速域でのチャタリング(バキバキ音)の発生に繋がり易く、
日常的には少々使い難い面が出てしまいます。
機械式LSDをシッカリと理解していないユーザーは"チャタリングの出るLSDは性能が悪く、出ないLSDは使い易く性能が良い"と考え気味ですが、オイルによっても随分と特性を変えられる事を覚えておくと良いでしょう。
また、チャタリングのみでLSD全体の性能を決め付けてしまう事は大変粗い選択であり、どの機械式LSDもある程度のチャタリングは避ける事はできません。
また、高性能&リーズナブル価格を設定し多くのロードスターユーザーに機械式LSDの楽しさを提供したいとマルハは頑張っています。